イ−ゴリ・コリャド
核実験被害者同盟−アルタイ支部
1949年から1962年までセミパラチンスク核実験場で行われた大気圏内核実験に
より、アルタイ地域の人々は放射能に曝されました。アルタイ地域で48回の核爆発が行
われたのです。特に1949年8月29日の核実験と1962年8月7日の核実験によっ
てアルタイ地域には放射能が拡散しました。1949年8月29日の実験で、270、0
00人以上の人々が50ミリシ−ベルトの、40、000人が250ミリシ−ベルの放射
能を浴びました。
アルタイ地域の田舎やラブトフスクの町では、住民は50ミリシ−ベルを越える放射能
に曝されました。169の集落で被曝量は50ミリシ−ベルを越え、49の集落で250
ミリシ−ベル、6集落では1、000ミリシ−ベルを越える放射能が降り注ぎました。ロ
シア連邦では1991年からずっと、放射能事故の被害緩和に焦点をあてた取り組みを重
視してきました。それは
・1994年から2000年の間に、セミパラチンスク実験場の核実験で被曝したアルタ
イ地域への社会的・経済的発展と住民の生活の回復。
今日ロシアの生活全般にわたって影響を及ぼしている経済危機というマイナス面にもか
かわらず、過去10年間の成果には著しいものがあります。核実験が行われた場所に住ん
でいた人々の健康が放射能被曝で影響を受けていることは科学的に確認されました。
1949年から1962年の実験によってさらに放射線量が増え、新たな集落が健康に
著しい影響を受けていることが、再建の取り組みの中で明らかになりました。
被曝した集落の生活の条件や医療の特殊性に応じた手段がとられています。
しかしながらアルタイ地域の医療学的統計や社会的状況は厳しいものを示しています。
500から1000ミリシ−ベルの放射能被曝を受けた人が悪性腫瘍で死亡する率は被曝
していない人の1.7倍、1000ミリシ−ベルあるいはそれより高い放射能に被曝した
人の死亡率は被曝していない人々の2.5倍です。悪性腫瘍による死亡率が最も高いのは
幼くして被曝したグル−プです(0歳から15歳で被曝した人たち)。消化器の悪性腫瘍
で死亡する率は被曝していない人の2.4倍、呼吸器官の悪性腫瘍では2.8倍です。ア
ルタイ地域の被曝住民の中では、被曝していない地域と比べ、腫瘍によらない病気で死亡
したり病気になったりする人も増加しています。
最終的にはロシアの経済的状況により、基本医療に最新の診察・医療器具を供給し、患
者に効果的投薬と必要な栄養補助食品を供給するなど、被曝住民に対する医療援助の改善
についての目的の全部は、計画期間中に達成できませんでした。
2001年に出されたロシア連邦政府の新しい連邦計画「2010年までに放射能事故
による結果を緩和するために」の担当は「国防・緊急事態・災害対策省」です。この計画
には次のような内容が含まれます。
・チェルノブイリ事故の結果の緩和
・核施設工場「マヤ−ク」事故の結果の緩和
・セミパラチンスク核実験場での核実験の結果の緩和
連邦計画「2010年までに放射能事故による結果を緩和するために」の目的は、20
11年までにセミパラチンスク実験場での核兵器実験によって被曝したロシア連邦の住民
を放射能汚染から保護すること、その地域の社会的経済的回復を行うこと、それらの方法
を完成させることです。
計画の実施手段は3つの主要な分野からなっています。
核実験による被曝者、事故の「処理者」や将来の世代が受ける数10年にわたる被曝の
医療上の結果を考えると、こうした人々の健康を医学の上から引き続き観察しなければな
りません。
被曝者の医療面の戦略的基礎には、健康に及ぼす影響(現在、今後予測されること)と
放射線被曝の医療面での結果の緩和という実際的な方法が含まれます。
計画は次のような実際的な方法を前提にしています。
・「全国放射能・疫学記録一覧」の活動の提供
・被曝者と被曝一世、二世など子どもたちに医療援助を与えること
・被曝と死亡や病気の因果関係を確かめるため、省内の専門委員会の活動の提供
次のような手段がとられることが予測されます。
・被曝者、被曝一世や二世などの子どもたちの被曝量や医学情報など必要なものを含めて
個人的記録の作成
・連邦レベル、地域レベルの機関から被爆者に対し特別の医学的援助を与える
・放射能事故の処理者を含めた被爆者に救急援助・日常援助、また相談などの援助を与え
るための診断装備や投薬を備えた医学施設や予防施設などの団体の設置
・アルタイ共和国の遠隔地の集落に医療援助を与えるため、往診部隊の設置
・被曝者に援助を与える施設の医療従事者に毎年トレ−ニングを実施する。
・セミパラチンスク核実験場での被曝と、死亡や病気との関係を述べるため省内専門委員
会に医療記録の専門家を置く。