原水爆禁止2002年世界大会
国際会議
日本共産党国際局長、原水爆禁止世界大会議長団
日本原水協担当常任理事
緒方靖夫
前回2001年大会以来の核兵器をめぐる情勢の最大の特徴は、単独行動主義(ユニラテラリズム)をかかげて圧倒的な核優位を追求してきたブッシュ米政権が、9月11日の憎むべき国際テロ事件を口実としてアフガニスタンでの報復戦争をすすめながら、実際の核兵器使用を選択肢にいれて“覇権主義の暴走”ともいうべき危険な道にのりだしていることです。世界は、このことによって武力行使、戦争をおこなう敷居が引き下げられ、しかもそのなかで、核兵器使用の敷居も引き下げられるという重大な事態に直面しています。
2000年5月のNPT再検討会議では、アメリカも含む187ヵ国が核兵器廃絶の目標から「究極的」の言葉をとり、「核兵器の完全な廃絶を達成」することを「明確に約束」しました。しかし、ブッシュ政権は、今年1月のNPR(核態勢の見直し)を通じ、アフガニスタンでの戦争を踏まえて地下深くの洞窟や地下施設を破壊できる小型の戦術核兵器の使用をはじめとする「実際に使用することを想定した核兵器の開発」を促進しています。これは、残虐な非人道兵器である核兵器を通常兵器と変わらないカテゴリーに包括する試みであり、国連第一号決議が「原子爆弾の廃絶」をよびかけて以来の国連諸決議にも反するものです。
さらに、ブッシュ大統領は、非核兵器国もふくめた7ヵ国への核兵器使用計画の策定をすすめるというきわめて危険な戦略にふみこんでいます。これは、歴代の米政権が1978年以来、非核兵器国への一方的な核攻撃をおこなわないとくりかえしてきた国際的な誓約さえ踏みにじるものです。ブッシュ政権は、「悪の枢軸」のレッテルを貼り、イラクへの軍事先制攻撃を実行しようとしています。その際の構えは、核攻撃も辞さずというものです。
こうした情勢下で開催される2002年世界大会の任務は明瞭です。世界の反核・平和勢力が、アメリカの先制攻撃を阻止し、核兵器使用の手を抑え込むことにあります。さらに、こうした逆流を許さず、核兵器廃絶の国際公約を一刻も早く実現するために、その一点で世界的な共同を強めることです。
国連憲章に明記されている武力不行使、戦争禁止の国際規範は、国際社会の平和と社会進歩を擁護するたたかいのなかで積み上げられてきたものであり、簡単に崩れるものではありません。アメリカの横暴な単独行動主義は、この根本原則に真っ向から反するものだからこそ、アメリカと同盟関係にある国も含む世界各国や地域機関で、反対の声がおきています。欧州連合(EU)と中南米諸国首脳会議でも、アメリカを特権的地位に置くユニラテラリズムに反対の共同宣言が採択されたことは、そのあらわれの一端です。
「新アジェンダ連合」、アセアン(東南アジア諸国連合)諸国、非同盟運動は、核兵器廃絶の国際公約をつくるうえで多大な貢献をしてきましたし、アメリカなどによる逆流が顕著になっている状況下でも、明確な方針のもとで、核兵器固執勢力を孤立させ、世界の非核・平和のたたかいを鼓舞してきました。長い歴史と伝統をもち、広島・長崎のある被爆国で開催されている原水爆禁止世界大会は、その点で、大きな役割を発揮してきましたが、今日の重大化する情勢のもとで新しい役割の発揮がいっそう求められています。
「新アジェンダ連合」、アセアン諸国、非同盟運動などと原水爆禁止世界大会との連携は、いっそう重要かつ切実なものになっています。前大会に続き2002年世界大会には、代表性の高い政府代表が参加しています。核兵器廃絶の実現のためには、NGOに代表される諸国民の運動、諸国政府の行動、核兵器のない世界を願うすべての勢力の共同が重要です。その点で、この大会がもつ任務は実に重大です
第13回非同盟首脳会議は、来年2月にマレーシアの首都クアラルンプールで開催されることが決定されています。この会議準備のために南アフリカ・ダーバンで開催された閣僚会議の共同コミュニケでは、今日の世界での危険の根源としての単独行動主義、核兵器使用宣言を指摘し、核兵器完全廃絶の緊急性を訴えています。本大会の基調と強い政治的な一致をもつこの非同盟運動に連帯し、また核兵器廃絶の事業をすすめるために今後連携を強めていくことが重要であると確信しています。
こうした情勢下で、ひたすらアメリカの核政策に追随し、世界の大勢に逆らう日本政府の姿があらわになっています。小泉首相は、ブッシュ政権の先制攻撃論や非核兵器国への核使用の是非について、「米国の選択肢」としてあからさまに容認する国会答弁をおこないました。福田官房長官が、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの「非核3原則」について、「国際情勢が変化したり世論が核を持つべきだとなれば、変わることもあるかもしれない」と見直しに言及したことは、核兵器廃絶の世界の流れに最悪の逆流を持ち込むものにほかなりません。さらに川口外相は、「核兵器のみを他の兵器と切り離して取り扱うのは現実的でない。かえって抑止のバランスを崩す」とのべ、いまどき「究極的廃絶」論に逆戻りさせようとする驚くべき態度を表明しました。
それだけに、日本の反核・平和を願う国民の使命はいっそう重いものがあります。広島・長崎の惨劇を体験した被爆国であり、戦争を放棄した平和の憲法を持つ日本こそ、21世紀に再び核兵器を使おうとするブッシュ政権のたくらみを許さず、核兵器のすみやかな廃絶を実現する運動の先頭にたつことが強く求められています。
日本共産党は、この運動をともにすすめ、国連憲章にもとづく平和の国際秩序の確立、平和と社会進歩のための国際的な連帯と共同を大きく発展させるために今後も奮闘することを誓って、発言を終わります。