原水爆禁止2002年世界大会
国際会議
ジョゼフ・ガーソン
アメリカフレンズ奉仕委員会
ブッシュ政権の地球規模十字軍に抵抗して
友人のみなさん、
世界がますます危険になりつつあるこの時期に、広島を再び訪れ、原水爆禁止世界大会に参加できるのは特別な名誉です。山口仙二さんが「歴史上最悪のテロ行為」といみじくも表現された惨事と、9月11日の後に起きた戦争、それに続く国家テロや非国家テロの予兆の恐怖に直面している私たちにとって、「平和な明日をめざす9月11日の家族の会」のリタ・ラサルさんや、アメリカフレンズ奉仕委員会の他の代表たちとともにこの会議に参加できることは、特別な喜びです。彼らは、新しい世代の活動家や組織者を代表しており、再び活力を取り戻したアメリカの平和運動に道徳的な展望と指導性を与えてくれています。私たちは共に、日本の平和運動や世界の仲間たちの掲げる展望や、そのエネルギーや決意によって、励まされ、若返ることができるでしょう。
昨年、私は「暗い時代の抵抗」の緊急性についてお話ししました。当時、私たちは、無謀なほど野心的で、軍国主義的、帝国主義的なブッシュ政権が何をめざしているのかを十分に予測することができませんでした。しかし、あの冷戦復活への動きが、帝国主義の再強化、侵略、そしてもしかすると核戦争が起こるかもしれない極めて危険な時代に、私たちを向かわせていることは明らかでした。ブッシュ政権のすすめている地球規模の十字軍遠征を私たちがどのように実感し、理解しているのかを要約してお話しする前に、9月11日のテロ攻撃について言及しておきたいと思います。9月11日は、チェイニー副大統領が1年以上も前に述べたように、「21世紀の枠組み」を押し付ける口実として利用されています。
9月11日の罪もない市民にたいする攻撃は、犯罪的で無差別な攻撃として、大きな衝撃を与えました。当時、友人や家族がニューヨークやワシントンに住んでいる、あるいは友人、家族が飛行機に乗っていた人々は、愛する人々の身の上を深く案じていました。あの攻撃の残忍さは核のホロコーストとは比べようもありませんが、負傷し、恐怖におびえて町を逃げ出すニューヨーク市民の影像をテレビで見ていた私は、広島や長崎の影像を思い出さずにはいられませんでした。
もちろんアメリカはこれまでに、外国にたいして、これとは比較できないほどの死と破壊をもたらしてきました。広島や長崎にたいして行ったことに加えて、アメリカはインドシナからイラク、そしてパナマからパキスタンに至る各国で新植民地戦争をおこないました。これらの戦争は、国際的な危機や戦争になり、20回以上も大規模な核戦争が勃発しそうになりました。しかし、ノーム・チョムスキーが指摘したように、昨年の9月にはこれまで起こらなかったことが起きました。つまり、あのとき初めて暴力が覇権者であるアメリカにたいして向けられたのです。
また、世界貿易センターと米国防省ペンタゴンへの攻撃によって生じた損失や衝撃、露呈した攻撃にたいする脆さなどが原因で、アメリカで国のアイデンティティー危機がおきたことは重要です。なにしろ、この200年近くで初めて、私たちは国土にたいする大規模な攻撃を受けたのです(日本による真珠湾攻撃当時、ハワイは州ではなく植民地でした)。冷戦時代から、私たちはすでに海でさえミサイル攻撃から私たちを守るには十分広大ではないことを分かっていました。しかし今や、「アメリカの破壊」を決意している者たちによって、海の向こうから死の攻撃を実際に受けたのです。
権力の行使にたけているブッシュ政権は、9月11日の攻撃以後に生じた同情や恐怖や精神的混乱、怒りなどをうまく利用しました。コリン・パウエルは、これをアメリカの外交や軍事政策の「リセット・ボタンを押した」と表現しています。ブッシュ政権は、法律、外交、警察、諜報などの手段を使って、犯人を捕らえて裁判にかける代わりに、アフガニスタンにたいし戦争をしかけ、しかもその戦争では、推定で最低でも5,000人の民間人が死にました。これは9月11日の死者数のほぼ2倍です。アフガニスタンでは、権力の座を狙っていた野蛮な軍事指導者たちが再び政権に返り咲き、戦争はパキスタン、カシミールそしてインドにまで広がってしまいました。ブッシュ政府は、今後、彼らが第三次世界大戦とよぶ戦争を、80もの国々で、堂々とあるいは隠れて行うことになると宣言しました。最初の国はフィリピン、次はイラクです。
9月11日の衝撃の精神的後遺症や、政府とマスコミが共謀して宣伝したファシスト的な「我々は団結して立つ」という言葉に象徴される愛国主義により政治や外交面での後押しを受けて、ブッシュ政権はABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)から離脱し、アメリカの軍事予算を3分の1近く増して4千億ドルに引き上げました。これはアメリカを除いた、軍事費上位25カ国の軍事予算の総額を上回る額です。また、これによってアメリカはベトナム症候群をくい止め、信頼性を失った同盟関係をさらに拡大し、インドネシアからウズベキスタンに至る腐敗して抑圧的な政権の国々と新たに同盟を結びました。ロシアやインドとは、まだ初期段階だった同盟関係を本格化し、世界、特に石油や天然ガスの豊富な中央アジアにまで、アメリカの海外軍事基地のネットワークを拡げ、危険きわまりない「核態勢見直し」を発表しました。また、武力行使を規制しているジュネーブ条約や国連憲章など、数世紀にわたって粘り強い交渉で苦労してつくられた国際法を放棄・破壊することができたのです。これらは、東西冷戦時代の戦士であった前アメリカ国連大使リチャード・ホルブルックでさえ、「伝統」との「抜本的な決別」であると表現するほどの暴挙です。
広島でこうして私たちが会議をしているあいだにも、ワシントンの無謀な一国単独行動主義者たちは、今後数ヵ月間に、イラクにたいして戦争、しかも核戦争までもしかける準備をすすめています。軍部と「国家安全保障」の高官たちは、これが「ベトナム戦争以降では、アメリカによる最も重要な武力行使」になると考えているのです。
4月20日のワシントン行進に私たちとともに参加した日本の若い活動家のみなさんも知っているように、あの行進は事前の予想をはるかに上回る大成功をおさめました。ブッシュの世界戦争と、市民的自由や憲法が定めた民主主義にたいする攻撃に抗議しようという私たちの呼びかけに、10万人の人々が応えてくれたのです。しかし、悲しいことに、アメリカ国民の大多数は、依然として眠り込んでいます。実際、1962年のキューバ・ミサイル危機の時期は例外かもしれませんが、現在、アメリカの政治情勢と文化は、マッカーサー時代、ベトナム戦争、レーガン時代などを経験した私のこれまでの生涯でも最悪の状態にあります。
ブッシュ大統領の国家安全保障顧問コンドリーザ・ライスは、現在は、ワシントンが(スターリンの支援を得て)冷戦体制をつくりだした1945年から1947年の期間と同じであると言っています。アメリカが初めてフィリピン、グアム、キューバ、プエルト・リコなどを征服した、1898年のいわゆる「米西戦争」以降で、アメリカの指導者たちや主流メディアが、アメリカとその世界に広がる影響圏を、今ほどためらいなく「帝国」とよんだ時代はありません。ニューヨーク・タイムズ紙は、ローマ帝国以来、一つの国がこれだけ優位に立ったことはかつてなく、ローマ帝国が世界の一地域に限定されていたのに比べ、ワシントンの帝国は地球規模で、他の国々の文化により深く、より徹底的に浸透し、それらを破壊していると報じましたが、残念ながらこれは真実です。
ブッシュ政権の第一撃用および先制攻撃用の核兵器と戦争政策についてお話しする前に、この政権の地球規模十字軍の重要な側面でもある、憲法で保障されている公民権や自由への攻撃について少し述べたいと思います。1930年代から40年代にかけて、日本の軍国主義は、全体主義的に近い環境を必要としていました。ですから、今日、日本国民が国会に提出されている「有事法案」の影響について心配するのは当然です。同じように、アメリカでも、ブッシュ政権は、ちょうど世界各国に「我々の側につくか、さもなければ我々の敵だ」と迫ったと同じ理屈で、国内の批判的な考え方や民主的な意見をもつ人々を弾圧しようとしています。アメリカの法律施行の最高責任者であるアシュクロフト司法長官は、政権にたいする批判は「アメリカの敵に弾薬を与え、アメリカの友好国を躊躇させるものだ」と警告しました。
新たに「国土安全保障省」がつくられる一方で、軍部は新しく「北方司令部」を設置しつつあります。この司令部は、アメリカを防衛し、「民間当局に支援を提供する」使命を与えられています。これ以上に懸念される動きは、アメリカ国内で軍が法執行者となる(警察の役割を果たす)ことを禁止している125年前にできた法律を見直す計画です。さらに、いま提案されている「TIPS」計画は、スターリン主義をアメリカに持ち込み、数百万人のアメリカ国民に、隣人をスパイしたり、告発したりすることを奨励することになるでしょう。副大統領夫人と前の民主党大統領候補者のリーバーマン上院議員は、学問の自由を制限する運動を始めました、また司法長官は、信仰の場所や宗教団体内に諜報員を配置しようとしています。ペンタゴンが、ちょうど第二次世界大戦の時と同じように、国内および国際的な戦争キャンペーンのために、ハリウッドの映画産業を雇っていることを知っておくと、このような国民を戦争に動員しようとする動きの本質を理解しやすいでしょう。
ブッシュ大統領はイスラム教徒やアラブ系アメリカ人を尊重することの重要性を説いていますが、多くのアラブ系あるいは南アジア系アメリカ人は、日常的に様々な差別を受け、ときには虐待さえも受けながら、恐怖のなかで暮しています。5,000人以上が警察に「招待され」、「インタビュー」を受けました。また、1,000人以上が、外部との交信を許されず、着替えも与えられないまま長期間拘留されています。弁護士と依頼人間の秘密保持の権利は廃止されました。さらに、大統領命令によって、2千万人もの移民が、秘密の軍事裁判にかけられることができるようになりました。この軍事裁判では、証拠は被告側には開示されず、極端な場合には、上告する権利も認められずに処刑されることもありうるのです。
アメリカのおこなっている他のプロパガンダと同じように、ブッシュ大統領とプーチン大統領が調印した3ページからなる米ロ協定は、軍備管理・削減の合意としてよりも、ロシアがアメリカと暗黙の同盟関係を結んだことの表れであるという点で重要です。両国はいずれも、たった一つの核弾頭も廃棄すると約束してはいないからです。そしてABM条約を破棄し、核態勢を見直し、軍の戦略(核)司令部と宇宙司令部の統合を計画しているアメリカは、核の優位性と先制核攻撃戦争によるテロをおこなうことを決意しているのです。
ブッシュ政権は、最近アメリカの戦争遂行で慣例となったパターンをそっくりそのまま踏襲しています。事実、戦争開始の準備をすすめているワシントンは、攻撃の標的となっている国の政府が防衛のために大量破壊兵器、とくに生物、化学兵器を使用しようとする誘惑にかられないように、核攻撃をするぞと脅しています。ちょうど父親のブッシュが1991年の「砂漠の嵐」作戦の前に、核攻撃をすると威嚇したように、現ブッシュ政権は、アルカイダとタリバンに核攻撃をすると伝え、イラクにたいする「政権を変える」ための戦争を準備するなかで、先制攻撃・第一撃核戦争ドクトリンを発表しました。これは「全面的支配ドクトリン」のひとつの表れにすぎません。
核態勢見直し(ブッシュ政権の核兵器・核戦争ドクトリン)は、世界の注目がアフガン戦争に集まっているときに、ひっそりと発表されました。このドクトリンについて最も早い時期に出され、最も広く報道された批判の一つは、天然資源保護協議会(NRDC)によるもので、ブッシュ政権が核兵器にのぼせあがっていて、NPT体制から「逃げ出そう」として「あたかも核兵器を規制しようというふりをしている」という痛切な批判でした。ニューヨーク・タイムズ紙でさえも、社説で、アメリカは核の「ならずもの国家」になりさがり、「ロナルド・レーガンの大統領一期目に冷戦が復活した時以来、アメリカの防衛戦略でこれほど核兵器が重視された時はない」という、NRDCと基本的に同じ意見を掲載しました。
ブッシュ政権は、アメリカの核兵器の標的となる可能性の最も高い国としてイラク、北朝鮮、シリア、リビア、中国、ロシアを名指しただけでなく、核兵器と通常兵器、ミサイル防衛、そして技術的により高度な核兵器インフラからなる「新三本柱」によって、「前面的支配」体制を強化しつつあります。ブッシュ政権は、NPT条約の誓約を遵守するどころか、核兵器は今後5年間とも、アメリカの軍事力のかなめ石となると再び主張しています。たしかに、ペンタゴンは、「実戦配備」核戦力の数を減らすことで、STARTII条約やロシアとの最近の合意を守る方向で動いています。しかし、このごまかしの数の後ろには、さらに12,770もの核弾頭があり、これらはアジア、中東、アフリカ、ヨーロッパの諸国を攻撃するために、再配備され、使用することができるのです。NRDCの報告では、「ブッシュ政権が能力を維持しようと計画している実際に配備可能な核兵器数は、1,700から2,200ではなく、なんと15,000」なのです。(整備中のトライデント潜水艦用の240基の核弾頭、「対応戦力の予備」の1,350の戦略ミサイルと爆撃機用弾頭、アメリカ/NATO軍の核・非核両用航空機に配備された800の「非戦略」核兵器、320の「予備戦力の非戦略・海上発射巡航ミサイル弾頭」、160の「予備の」「戦略および非戦略弾頭」、4,900の「予備不活性備蓄戦力の‘無傷の’弾頭」、5,000の貯蔵され、再び組み立てられる「一次」および「二次」弾頭部品。)
この他に、いわゆる「ミサイル防衛」と、アメリカの核兵器製造施設の再活性化があります。ABM条約破棄、アラスカにおける「ミサイル防衛」基地の建設、そしてやつぎばやに実施される秘密実験などによって、ブッシュ政権は「ミサイル防衛」の配備を急ピッチですすめています。ミサイル防衛は、たとえうまくいかなくても、宇宙の軍事化を独占する手段を提供し、軍事用エレクトロニクス革命に資金を供給し、アメリカの振り回す第一撃核とハイテクの剣をさらに強化する盾を作ることを展望しているのです。ワシントンは、ミサイル防衛配備が、この北東アジアで新たな軍拡競争を引き起こすことをあまり懸念していないように思われます。
核戦争三本柱の3番目の柱は、アメリカの核兵器製造インフラの再活性化です。彼らは新型核兵器の「大増産」を準備し、「全く新しいシステム」を開発・配備しようとしています。そのために、オークリッジとパンテックスの核兵器工場を拡充し、ロスアラモス、サンディア、ローレンス・リバモアなどの研究所で「高性能弾頭設計チーム」を再編成し、地下貫通型の「バンカー・バスター」核兵器を開発し、配備する計画です。また、ブッシュ政権は、これら新型核兵器の性能を確かめるために、核兵器再開にかかる時間を短縮しようとしているのです。
つまるところ、ジア・ミアン教授が言うように、ブッシュ政権は、誰もアメリカの支配に挑戦しようなどと考えることすらしないような状況を確保しようとしているのです。
私たちはこれに抵抗していますが、まだまだ力がおよばないため、どうしてもみなさんの助けが必要です。9月11日以後、平和運動の掲げている要求は1)テロ攻撃の犯人を法的手段で裁判にかけること、2)戦争は答えではない、3)危険にさらされているコミュニティー(アラブ系、南アジア系の人々)と憲法に保障された市民的自由を擁護すること、4)9月11日のテロ攻撃とその後起こされた戦争の根本原因の解消に取り組むことです。
会議、抗議集会、4月20日のデモ行進、盛り上がる対イラク戦争反対運動、最近出された「核の危険を終らせる緊急呼びかけ」から生まれた新しいエネルギーなどによって、ブッシュ政権の地球規模十字軍と、その「21世紀の枠組み」にたいする反対は大きくなっています。
今後数ヶ月間の私たちの最も緊急な課題は、イラクにたいして、核戦争になるかもしれない戦争が起こるのを阻止することです。この戦争は、アルカイダのテロとは全く無関係であり、石油の豊富な中東地域にたいし、そしてその結果として全世界にたいし、アメリカの覇権を再び強化することだけを目的とした戦争です。アメリカの平和運動、軍の一部、民主党と協力する「国家安全保障」高官などの圧力を受けて、上院外交委員会はこの戦争についての公聴会を開始します。一方的な、そして何の挑発も受けないのに始められようとしている対イラク戦争が、多くの民間人の犠牲者を出し、中東全体を大混乱に落としいれ、アメリカによる終わりなきイラク占領、あるいはそれより悪い状態につながり、アメリカとその従来の同盟国とのあいだに深い亀裂を生むのではないかという恐れが増大しています。しかし、公聴会だけでは、イラクに執念を燃やしているブッシュ政権が、戦争をするのをくい止めるには不充分です。ベトナム戦争やレーガンの核の狂気の時のように、アメリカ国内の不断の反対運動と、それと同じあるいはそれより大きな国際的な非暴力抗議行動が結びついてこそ、これ以上の大惨事が起こるのを阻止することができるでしょう。
アメリカフレンズ奉仕委員会、「荒野のよび声」その他の組織は、イラクに代表団を送り、少なくとも50万人の子供を死亡させた対イラク経済制裁の解除を支援しています。代表団に参加した活動家たちは、それぞれの町に帰り、近づく戦争に反対しようと訴えています。8月6日には、アメリカの地域に根ざした活動家たちが、広島の被爆と迫る対イラク戦争とを関連付けた行事を行います。また、9月11日の一周年を、戦争支持への大量動員に変えようとする政府のキャンペーンをはね返すために、国内各地で平和の夕べや平和集会がおこなわれることになっています。アメリカフレンズ奉仕委員会は、「ノーモア・犠牲者」遊説を行います。これには「平和な明日をめざす遺族の会」、被爆者、そして9月11日以降肉親を失ったアフガニスタン、イラク、パレスチナ、イスラエル、フィリピンなどの家族も参加します。アメリカフレンズ奉仕委員会は、他の平和組織と同じように、今年の秋に一連の会議やデモを計画しています。また「抵抗の誓い」運動をすすめ、もしアメリカが戦争を始めた場合には、非暴力行動や市民的不服従行動を実行するつもりです。
核戦争阻止から核兵器廃絶へとテーマを変えて、1980年代の核凍結運動の指導者たちが提唱し、最近発表された「核の危険を終らせる緊急呼びかけ」を紹介しましょう。この呼びかけは、もともと、アメリカ史上最大の平和行進が行われてから20周年の記念日にニューヨークの大衆集会で発表され、アメリカ政府にたいし、次の4つを要求しています。1)核兵器の先制使用をしないこと、2)核弾頭の開発、実験、生産を永久にやめること、3)条約に基づいて撤去された核兵器の検証された相互破棄に関する協定をロシアと締結すること、4)包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准すること。この呼びかけの提唱者たちは、戦略的な考え方においては不充分ですが、今年中に100万人、2004年の大統領選挙までに1000万人分の支持署名を集めることをめざしています。マーキー下院議員に議会両院合同決議の形で提案してもらい、立法化することをめざしていますが、アメリカフレンズ奉仕委員会などの団体は、国民からこの呼びかけへの支持を取り付ける活動を始めています。
もう一つの嬉しい出来事は、10日前に行われた会議です。これにはアメリカ全国、そして韓国からコンゴにいたるアメリカフレンズ奉仕委員会のスタッフが集まり、核兵器廃絶を優先課題としてさらに重視することを決めました。そのために、啓蒙活動、市議会や地域での決議、住民投票、また議会に圧力をかけるために「緊急呼びかけ」や他の核兵器廃絶イニシアチブへの国民の支持を築き、広く示すことなどを重点とする運動の概要をうちだしました。私たちはアジアやヨーロッパの平和運動と協力して活動できることを期待しています。このなかでも中心的なのが、日本と世界のヒバクシャとの協力です。
発言を終る前に、アンナ・ガランドさんを紹介したいと思います。今年の春、アンナはロードアイランド州の仲間たちと、その州選出の上院議員に数百回の電話やファックスを送りました。この上院議員は、地中貫通型核兵器の研究・開発に予算をつけるかを決めるキャスチング・ボートを握っていた人です。アンナは、彼女のプログラム委員会のメンバーとともに、投票日当日に実際にこのリード上院議員と会談し、幸運にも、彼の支持を取り付けることに成功し、それによって私たちは、共同のたたかいの前半戦に勝利したのです。
友人のみなさん、現在は極めて危険な時期です。ヨーロッパの外交官やアメリカの思慮深い人々は、ブッシュ政権下のアメリカと1930年代のドイツは、状況が似ていると考え始めているほどです。数万人、あるいは数百万人の人々が生死の瀬戸際におかれているのです。アメリカ平和運動のベテラン活動家たちは、1990年代の休眠状態から脱出し、私たち全員が直面している危険に真剣に立ち向かおうと出来る限りの努力をしています。しかし私たちだけではそれは不可能です。私は、皆さん全員に、私たちの道義的、歴史的責任を認識して、これに全面的に応えてたちあがるよう呼びかけます。
ありがとうございました。
ジョゼフ・ガーソン:アメリカフレンズ奉仕委員会 ニューイングランド地域企画部長、平和・経済的安全保障企画長
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